平面指定(G17〜19)を変更すると何が変わるのか【初めてのNCプログラミング】
GコードのG17〜19は平面指定となっており、それぞれXY平面、ZX平面、YZ平面となっています。この平面を変えても直線で動かすと何ら違いがないように見えます。私がNCプログラムを学び始めた頃はこの平面指定の意味がわかっておらず、とりあえずG17にしておけば間違いないという考えしかありませんでした。
ここではG17〜19の平面指定を変えると、何が変わるのかを見ていきたいと思います。
平面指定と円弧補間
まず知っておかなければならないのが、設定されている平面によって円弧補間の軌道が変わってくるということです。
上の図だと分かりづらい人もいるかも知れませんが、円の中心と半径が同じでも、設定されている平面によって円の方向が異なります。円の中心と半径だけだと、3次元空間上には無数の円が描けてしまうので、平面を指定することによってひとつの円を指定することができるのです。
G17のXY平面で動かすつもりで円弧補間のあるプログラムを作り、G18のZX平面で動かすとアラームが出て動かないことがあります。これは指示された円弧が存在しない(描くことができない)ためですが、たまたま指示された円弧が存在してしまった場合には、アラームが出ないでそのまま加工を続けてしまうことになります。これは機上で空運転を行っても気がつきにくいので、プログラムの最初の方で必ずG17〜19の平面指定を行うことをおすすめします。
G17〜19の3つの平面しか選択できないことからもわかるように、3次元空間上に描けるすべての円軌道を行わせることができるわけではありません。ただし、オプションによってこの平面を回転させることができる機能もあるようで、この機能を使えばすべての円軌道を実現できるのかもしれませんが、私は使用したことがないので詳しいことはわかりません。
円弧補間の使い方については「G02 G03(円弧補間、ヘリカル補間)」のページを御覧ください。
平面指定と工具径補正
工具径補正とは、プログラムの工具経路に対して工具半径分ズラした状態で工具移動を行わせることができる機能です。工具径補正の使い方については「G40, G41, G42(工具径補正)」のページを御覧ください。
工具径補正には、進行方向に対して左側にシフトするG41と、右側にシフトするG42があります。左側なのか右側なのかは見る方向によって変わってきますが、この見る方向を決定しているのがG17〜19の平面指定です。
「G40, G41, G42(工具径補正)」のページでも書いていますが、進行方向の左側、右側というのは、指定された平面と垂直な軸のプラス側から見たときの方向となります。G17 のXY平面であればZ軸のプラス側から、G18 のZX平面であればY軸のプラス側から、G19 のYZ平面であればX軸のプラス側から見たときの方向です。
平面に垂直な軸方向への移動は、左側、右側という概念を適用できないので、プログラムの座標値の通りに動きます。つまり、平面に垂直な軸方向への移動に工具径補正をかけたい場合は、G17〜19を指定し直す必要があります。機種にもよると思いますが、工具径補正中には平面を変えることができないか、できたとしても予期せぬ動作が起こる可能性があるので、平面を変える場合には工具径補正を一度キャンセルしたほうが無難です。
円弧補間と工具径補正以外にも、固定サイクルや座標回転など平面の変更によって影響を受ける機能はありますが、最低限覚えておいたほうが良いのはこの2つだと思います。
- 最低限必要なコード
- ミスを減らすためにすること
- マクロプログラムを作るときの考え方
- 繰り返しと条件分岐の使い分け
- NCプログラムとは。そのメリットとデメリット
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- 標準で使える変数
- NCプログラムの改善とは何か
- NCプログラムと生産システム
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- 機械座標とワーク座標【初めてのNCプログラミング】
- 平面指定(G17〜19)を変更すると何が変わるのか【初めてのNCプログラミング】
- NCプログラムの基本は軸移動【初めてのNCプログラミング】
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- 工具長補正は連続加工に必須の機能
- ATC(オート・ツール・チェンジャー)の使い方
- 主軸回転数と切削条件の求め方
- ワークのセッティングと測定機器
- タッチセンサを使った自動測定
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→ NCプログラム上級編