ATC(オート・ツール・チェンジャー)の使い方

マシニングセンターとNCフライスの違いは、「ATC」(オート・ツール・チェンジャー)がついているかいないかの違いらしいです。逆に言えばそれ以外に違いはないとも言えます。

ATC機能とはその名前の通り、プログラム起動中に自動で工具交換を行ってくれる機能です。例えば一つの製品に3本の工具を使用する場合にATCがなければ、1本目の工具での加工が終わったら人が工具を付け替えて2本目の工具で起動し、2本目の工具での加工が終わったら3本目…というように、加工の合間に内段取りが発生します。

しかしATCがある場合は、最初の段取りで3本の工具をATCマガジンにセットしておけば、1本目の工具での加工が終わったら自動で工具交換をして2本目の工具での加工が始まります。つまり、人が介入する回数が減るので、無人化・省人化が達成できコストを大きく削減することができます。


プログラム内での工具交換の方法

ATCがついている設備には「T機能」がついています。プログラム内ではGコードなどと同じように「T1」「T2」という「T + 数字」の形で表されます。

機械の中にはATCマガジンという工具を何本も取り付けておける場所があり、そのマガジンの一つ一つに「T1」「T2」という番号がつけられています。つまり、プログラム内での T1 や T2 はマガジンの T1 や T2 と対応しているわけです。

プログラムで T1 を指令すると、マガジンの T1 にある工具が呼び出されます。ただし、T1 を指令しただけでは、工具交換可能な状態になっているだけで、実際に工具交換は行われません。工具交換を行うには、工具交換を指令する「M06」を指令します。M06 を指令すると、呼び出されている工具番号の工具(交換可能な状態になっている工具)を、主軸についている工具と交換します。T3 の工具と交換したい場合は「T3; M06;」と入力します。

上の説明からも分かる通り、順番としてはTコードでその工具を呼び出してから M06 で工具交換を行います。Tコードで工具を呼び出す前に工具交換をすれば、使いたい工具以外の工具と交換することになる可能性があります。また、予期せぬ動作を避けるため、Tコードと M06 は別ブロックで指令します。そして、これは設備にもよりますが、工具交換を行う前にZ軸の原点復帰をしておくのが無難です。

M33|工具収納

主軸についている工具とATCマガジンにある工具を交換するのではなく、主軸についている工具を単にATCマガジンに収納するだけを行いたい場合は、M33 を使用します。M33 を指令すると、主軸についている工具をマガジンに戻します。これは「T0; M06;」を実行したときと同じ状態になります。

加工が終了したときに工具をマガジンに戻しておくと、作業がしやすいかもしれません。

コラム一覧
  1. 最低限必要なコード
  2. ミスを減らすためにすること
  3. マクロプログラムを作るときの考え方
  4. 繰り返しと条件分岐の使い分け
  5. NCプログラムとは。そのメリットとデメリット
  6. NC設備も良いけど、何気に活躍する手動工作機械
  7. 標準で使える変数
  8. NCプログラムの改善とは何か
  9. NCプログラムと生産システム
  10. 分業のジレンマ
  11. 座標とはなにか【初めてのNCプログラミング】
  12. 機械座標とワーク座標【初めてのNCプログラミング】
  13. 平面指定(G17〜19)を変更すると何が変わるのか【初めてのNCプログラミング】
  14. NCプログラムの基本は軸移動【初めてのNCプログラミング】
  15. アブソリュート指令(G90)とインクレメンタル指令(G91)
  16. 工具長補正は連続加工に必須の機能
  17. ATC(オート・ツール・チェンジャー)の使い方
  18. 主軸回転数と切削条件の求め方
  19. ワークのセッティングと測定機器
  20. タッチセンサを使った自動測定

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