工具長補正は連続加工に必須の機能

工具長補正は、ATC(オート・ツール・チェンジャー)を使う場合には非常に便利な機能です。

工作機械を使い始めた当時は「ワーク座標系のZ軸に機械座標を入れておけば、工具長補正なんていらないのでは?」と思っていました。ただ、よくよく考えてみれば、ひとつのワーク座標系にはひとつのZ軸の座標値しか入力できないので、ATC を使って工具を2本以上使うときには、工具長補正を使わないと大変なことになるということに気がつきました。


なぜ工具長補正を使うのか

立型マシニングセンターなどの場合、Z軸方向の基準をどこにするのかは加工する製品や会社の慣行などによって異なるとは思いますが、基本は製品の上面に工具の刃先がくる位置になると思います。ただし、機械のテーブルの上に製品を置いたり、工具を主軸に取り付けたりしただけでは、ワークの上面や工具の刃先の位置を機械が認識することはできません。これは工具長補正を使わずに、ワーク座標系のZ軸に機械座標を入力する場合も同じです。

機械にZ軸方向の基準を教えるために、ブロックゲージやプリセッターを使ったり、あるいは製品に直接刃先を当てるなどの方法によって機械座標を確認し機械に入力します。しかし、ここで得られた機械座標はその工具でしか使えません。

工具はシャンクなどと呼ばれる工具保持具に手作業で取り付けますが、工具の突き出し量は当然バラバラになります。1ミリ単位であれば目視でも合わせることはできますが、0.1ミリを目視で判別することはかなり難しいですし、なにより不確実です。つまり、使用する工具の数だけ機械座標値が必要になるということです。

ワーク座標は通常 G54〜59 の6個が使用できます。つまりワーク座標のZ軸に機械座標を入力する方法でも、使用する工具の数が6本までなら工具長補正を使わずに加工することはできます。ただし、X座標とY座標は6個すべてに同じ値を入力しなければならないこと(入力ミスが増える可能性)、そのためにワーク座標が実質1個しか使えないこと(複数個連続で加工できない)、工具が7本以上の場合は連続で加工できないこと(加工の合間に余計な段取りが必要になる)などの問題があります。これらはすべて工具長補正を使うと解決できます。

工具長補正はかなりの数を使用することができるので、工具が7本以上でも対応できますし、ワーク座標もひとつあれば十分です。もちろん複数個の製品を加工する場合にはワーク座標6個をすべて使用することもできます。

ATC を使った連続加工をする場合には、工具長補正は必須の機能になるわけです。

実際の工具長補正の使い方

工具長補正の使い方を調べてみると、大きく分けて2つの方法がありました。

1つ目は、ワーク座標のZ軸には0を入力しておき、1本目の工具の刃先が製品の上面に来たときの機械座標値をそのまま工具長補正(H1 など)に入力する方法です。2本目以降の工具も同じように機械座標値をそのまま H2 などに入力していきます。私はこの方法が一般的なものだと思っていましたが、どうやら他の方法を使用しているところもあるようです。

その2つ目の方法は、1本目の工具の刃先が製品の上面に来たときの機械座標値をワーク座標のZ軸に入力し、工具長補正のH1には0を入力しておきます。そして2本目以降の工具は1本目の機械座標値との差を工具長補正の H2 などに入力していく方法です。

この2つ目の方法は、計算ミスを起こしやすいのであまり良くないのでは、と思っていました。しかし、ツールプリセッター(この名称があっているのかわかりませんが)という機械の外で工具の突き出し量を測定できる機器を使う場合は、この1本目の工具との差を工具長補正に入力していく方法があっているのかなと思いました。

使い方はこれ以外にもあるのだと思いますが、あまり複雑になりすぎてもミスの原因になりますから、この2つが現実的でしょうか。

工具長補正の基本的な使い方については「G43, G44, G49(工具長補正)」のページを御覧ください。

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